株式会社アトックス

株式会社アトックスと、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構は、世界で初めて半球状の検出器配置を採用した、小型・高性能なヘルメット型の陽電子放射断層撮影（PET）装置を開発し、製品化しました。

「頭部専用PET装置 Vrain®」と名付けた本装置は、アトックスが令和3年10月7日に医療機器承認を取得し、令和4年1月18日より国内で販売する予定となっています。

高画質・省スペースを実現した頭部専用PET装置の開発と、それを構成する産業用PC・キャビネットの開発製造

PET検査の主流は，糖ががんに集まる様子を調べる検査薬を使った全身のがん診断です。

そのため、従来型のPET装置の検出器リングは大型となり、患者は専用のベッドに横になって検出器のトンネルをくぐる方法のため、PET装置はどうしても大型で高価になり、導入できる病院も限られています。

その一方で、近年、アルツハイマー型認知症の進行に関わるとされる物質の検出に特化したPET検査薬の開発が進んでいます。そしてそれに伴い、頭部に特化して、小型で、さまざまな病院への普及に適した「コンパクトなPET装置」が切望されてきました。

アトックスは、この検査ニーズをいち早くとらえ、自社で培われた放射線技術を医療市場にも展開しています。

アナログ・テックでは、医療機器開発を進められるお客様に向けた産業用PCコンサルティングを手掛けています。

このたび、アトックスでは、この「高解像度でありながらコンパクト」という新型の頭部PET装置の開発にむけて、医療機器開発に精通したアナログ・テックへ、産業用PC群と、それらをコンパクトに納めるキャビネットの開発・製造を依頼しました。

頭部PET装置の開発は2017年から開始をしました。

そして、それを構成する産業用PC群や、キャビネットの開発もスタートしています。

産業用PCの開発では、要望の具体化、仕様設計、試作評価、量産計画とステップを踏み、製品を構成する他の開発と足並みをそろえながら、長い期間を経て進んでいきます。

アナログ・テックでは、この医療機器開発のプロセスにおいて、アトックスと伴走しながら、新型の頭部PET装置に必要な機能要求事項と、医療機器に必要とされる規制・法令の両面からフィット＆ギャップを進めてきました。

用途、実装アプリケーション、予算、納期、要求スペック、筐体サイズ、修理サポート期間、OS、EMCなど所定規格への対応など、必要となる要件を把握させて頂き、最適な組合せを算出します。

ご要望を最大限に取り入れた内容での仕様を提示して確認します。

仕様の最終確認をおこない、サンプル機器の製造の判断を行います。

サンプル機器を製造して、お客様側の評価検証になります。

サンプル機器の評価の結果をフィードバックし、修正箇所、追加のカスタムを確認して量産スケジュールの調整を行います。

頭部用の新しい機構によるPET装置の開発で重視されたのは、「高解像度でありながらコンパクト」という従来PET装置には無いコンセプトでした。

そのため、試作機の開発を目的で2段階に分け、第一段階は「完全な機能を満たす」ことを目的とした開発、第二段階は「部品点数や機構を整理統合することでのコンパクト化」を目的とした開発となりました。

PET装置全体の電源系統を最適化することで、産業用PC群の電源系統と検出器リングの電源系統、その他の電源系統を統合することによる電源最適化や、キャビネット内で独立していたメンテナンス用KVMとスイッチの排除、産業用PC群の役割を統合していくことで、キャビネットサイズをデスクの下に配備できるまで小型化しています。

このような産業用PCの開発で重要なのは、それが組み込まれる製品全体での最適化の観点です。アトックス、アナログ・テックは密な連携のなかで、PET装置という製品での全体最適のなかで課題に取り組み、小型化を実現させました。

本開発で小型化したPET装置用ワークステーション

株式会社アトックス 頭部PET開発室長 山下大地 様

株式会社アトックス（以下、「当社」）はこの度、初めて医療機器の設計を行いました。医療機器の設計においては、医療機器独自の規格ルールがあり、それに見当たった設計が必要になります。アナログ・テックは、申請機の元になった試作機の設計から当社に伴走頂き、将来的な改良（ディスコン対応など含む）も視野に入れた認証単位の設定などのアドバイスはもちろんのこと、小型化の提案なども一緒に検討して頂きました。

当社としては、PC関連の部材選定やそのアッセンブリについて、弱いところもあり、コストも重視して頂きながら、本装置に求める機能を最大限に生かせるアドバイスをして頂き、とても助かりました。今後もいろいろな場面でご協力して頂ければと思います。